2013年9月5日木曜日

【接待規制のその後。】2012年10月8日

正確には「自主規制」ですが、今年4月から製薬業界では、昔ながらのベタな飲食接待が禁止になりました。
もちろん、ホテルで講演すれば慰労としてのMR同席飲食があったり、高額な弁当が昼の製品説明会にたくさん準備されたりという、これまで通りの世間離れした実態もあります。

投入できる上限金額が一般ビジネスとは異なりますから、高級料理店の上客であった医師接待(ドクターコース)が減ることで、全国の飲食業界には大打撃だという報道もみかけました。

ゴルフ接待や観劇、カラオケなどの二次会も正式に禁止されましたので、今年度以降、MRの院外行動で処方箋に望ましくないバイアスがかかることは減るでしょう。

管理人もかつては、ふぐ料理、松茸料理、鉄板焼き、アジアン料理、寿司、フレンチなどの飲食接待を経験しましたが、開催名目の「製品説明」「近隣医師との顔合わせ」は、空腹で美食を見た途端に後回し。

とにかく高級な料理は美味しい、病院食堂とは違う・・・、という情けない夜の記憶だけが残りました。

みなし公務員になった途端、同じ製薬企業で接待ゼロとなる差もすさまじかったのですが、MRに必要な人脈・信頼構築をお題目にして続いてきた業界慣習が、「やや正しい方向」に変化したのは良いことだと思います。

医師が接待ゼロに慣れれば、患者の前で処方箋を書く際に、美食とMRの顔が浮かぶこともなくなります。
同じ薬効だから昨日言われた**さんの担当品に・・・と思わなくて済み、後ろめたい気持ちも消える。

MRとの距離は、飲食関連ではこれからも遠ざかる一方でしょう。

製薬企業が多額の飲食コストをかけて、お得意様の医師を囲い込んでおけば、自社製品の処方増=販売額の増加につながっていたのは、過去の話になりつつあります。

大手を含めて低分子薬のブロックバスターは徐々に減り、全国で新しい流行を生み出せばどんどん処方されるわけでもない。
最近の業界誌では、苦労して新規口座は獲得できても、その後の処方数が伸び悩むという報告も出ています。

DPCの導入拡大で、診療の利益確保には医薬品コストを低く抑えなければならず、後発品の導入比率が増加し、口座数をむやみに増やせない病院は、新規と既存で総口座数を一定に保とうとする。
有名な長期収載品が失われ、新薬はあまり処方されず・・・では、一般MRの悩みは増えるばかりになってしまいます。

自社で後発品を増加させてセットで攻めるにしても、病院・診療所・門前薬局で対応できる製品数には限界がありますので、やはり市場の食い合いになりやすい。
オンコロジーや難病など特定領域を攻略する場合は少し異なりますが、有力医師でも接待が通用しにくくはなるでしょう。

かつてはMRが飲食を通じて医師と親しくなっておくことで、非科学的であっても、実利を回収できる利点がありました。
MRの**さんと、**先生はいつも一緒に飲み食いしているという(道義的ではありませんが・・・)事実が、自社製品の売り上げを防御していることもあったのです。

管理人が開業医担当MRの社内研修をしているとき、返答に困ったMRが「先生、今度美味しいものでも食べながら・・・」と答えたことがありますが、そのような現場での事例も減るはず。

営業に飲食はつきものでしょう、という意見に対しては、透明性ガイドラインによる医師名・組織名の公表は、多くの医師にとって神経質にならざるをえない展開だ、とお答えします。

これまで、表沙汰になりにくい範囲で特定の製薬企業と親しかった医師でも、今後は公表されることを前提で行動せざるをえない。
「**製薬寄りの医師だ」と周囲から見られれば、もしかして科学的ではない診療をしている医師、と見なされる可能性も出てきます。
勤務形態によらず、医師は自らの評価につながる事柄には注意するものですから、MRへ正直に言わないだけで、こっそり行動変容を始めているかもしれません。

具体的かつ科学的な臨床思考にもとづく、「患者本位の処方決定」が必要だというのが、医師・薬剤師の常識へと変わりつつある。
当然、それが本来あるべき姿なのですが、MRの歴史に登場する過当競争がいかに壮絶で、現在にまで影響が及んでいることを、今回の接待規制は象徴しているのだと思います。

ベタな接待が駄目なら、地域研究会をたくさん開催して医師を集客だ、というのも有効ではありません。

熱心に診療・研究している医師であれば、自由時間も少なく、講演会参加よりも院内で患者さんの前にいるかもしれない。
夜遅くまでアポイントがずれこんで、MRに徒労感が残った場合でも、その医師が懸命に診療していれば反論はしにくいもの。
開業医も、往診や夜間診療で勤務している場合があります。

飲食接待は仕事後の空腹を満たし、幸福感を増し、アルコールの酔いによってお互いを饒舌にする効果はありますが、医学に求められる科学的な思考ではありません。
また、医薬品のコストである以上、国民医療費の一部をつかって高級な飲食をしていることになります。

酔ってしまう雰囲気では正しい思考判断や、適切なプロフェッショナリズムを維持することも難しい。
おもてなしの手段として考えても、縮小の方向へと進むでしょう。

では、平日夜の接待が減った場合、MRは何をすべきでしょうか?

私生活の充実も必要ですが、やはりリアルな医療を「勉強」しなければいけません。
製品知識だけでなく、制度や社会情勢、経済状況についても売り主体の企業側に頼らず、自力で前向きに学ばないと、医療の全体像はつかめません。

医療の常識が欠けたMRを、多忙な医師・薬剤師が現場で優しく厳しく育ててくれるのは幻影となっており、自学自習によってMRの潜在能力を高めていく必要があります。

勉強している人ほど尊敬を集めるのが医療界ですから、MRも同様の路線で攻めるべきなのです。
「よく勉強しているね」は、医師からMRへの嬉しい褒め言葉ですが、その道のプロになるには下積みと隠れた勉強が欠かせません。

勉強時間を確保する意味で、飲食接待が減少していくことはMRにとってプラスに働くと管理人は考えています。

接待規制のその後を決めるのは、医療者ではなく、MRをはじめとする製薬企業側。
名だたる大企業をはじめ、優良企業が多くある製薬業界ですので、襟を正しつつ「MRの本分」(by小久保光昭氏)を探求してほしいと思うのです。

なお、管理人は接待ゼロ生活の真っ最中ですが、それで困ることは何もありません。
それが普通になったのです。

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