2013年9月7日土曜日

【捨てたターゲット医師の向こう側】 2013年3月23日

MRが全ての担当施設を満遍なく公平に訪問することが、ますます難しくなっています。

施設ごとにターゲット医師と面会可能な時間が異なるので、毎週&1日あたりの目標コール数を達成する意味でも、無駄な待ち時間は削減したい。
面会後の運転時間や、施設近くでの駐車の手間も計算しないといけない。

ノルマの達成状況を考えると、月後半は担当品目の売り上げが多い施設を重点的にまわって、そうでもない施設は後回しにするしかないなあ。
社内の営業会議でも、「見込みのないターゲット医師は思いきって捨てる」という戦略が本社から提示されているし、このGPは今月の訪問をあきらめよう・・・。

管理人は、ときどき製薬マーケティング関係のセミナーで講演することがあります。

有識者の講演を聞くことにもなるのですが、マーケティング戦略では販促向上にむけて、「見込みのないターゲット医師を捨てる」といった攻め方があるようです。
各種のデータを分析して、諸事情とにらめっこした結果の社内方針となっていれば仕方ないのかもしれませんが、臨床医の管理人としてはどうにも悩む点です。

何回も面会に行って、著名医師を招聘した講演会に誘っても、さっぱり手応えなしというターゲット医師の場合には、あきらめの気持ちがMRに出ても不思議ではありません。

面倒な状況になりやすいターゲット医師は必要最小限の訪問にとどめて、信頼関係が構築されて処方数が伸ばしやすい施設を重点的に・・・というのは合理的な発想でもあるからです。
難攻不落の相手に手間取り、本来は確保しておくべき販売額を失うのは、MRとして社内での言い訳ができないでしょうし。

さて、これはMR側から捉えた場合であり、被ディテール側のターゲット医師からは、MRの思惑をつかみにくい部分です。

管理人も偶然、製薬営業の世界に足を踏み入れたのですが、独特の営業戦略を初めて知るたび、いまだに驚きを隠せません。
けれども、こうした捨ての戦略を知ってもっとも驚くのは、「捨てたターゲット医師の向こう側」、つまり「当該疾患の患者さん」でしょう。

かかりつけ医が処方してくれる医薬品に、MRの情報提供活動が関わることは多少認知されているかもしれませんが、その医師がMRから「実は捨てられている」と分かったら、どのように感じるでしょうか?
高邁な営業戦略が関わっているにしろ、患者さんには無関係の理屈であるわけで、嬉しい気持ちにはならないでしょう。

MRは自社製品の適正使用を促すことで、営業成績を伸ばしつつ、同時にターゲット医師たちの「治療選択肢を増やす」役割を担っています。

昔ながらの処方薬に固執する医師がいたとして、科学的&懸命なMR活動によって、副作用が少なく効果の優れた自社医薬品も処方してもらえるようになったら、その恩恵を受けるのは患者さんのはずです。
医師の処方選択に介入できる職種は非常に少なく、MRはその代表格なのです。

もしも「売り上げが伸びないから、訪問はいいや」と担当MRが考えてしまうと、ターゲット医師は今後も新しい医薬品を処方しない結果になり、大きな損をするかもしれないのは患者さんだ、という構図です。

社内ではさほど論議されていないのだと思いますが、「ターゲット医師を捨てる」のは、「その向こう側にいる患者さんの治療選択肢を増やさない」可能性が生まれるのです。

MRの来訪をきっかけにして新規処方される割合が高い日本では、ディテール内容の成否によって、患者さんの治療方針が変化してしまうことを忘れてはいけません。
ノルマを達成して社内の全国順位を上げるだけであれば、非効率なターゲット医師を捨てるのは、決して誤りとは言えない。

けれども、その発想を続けていると担当エリアにおいて自社製品が浸透しない事例が発生し、非重要ターゲット医師の処方に組み入れられず、最終的には事情を知りようがない患者さんが損をする。

とくに新薬担当のMRであれば、訪問先をやみくもに切り捨てないで欲しい、と管理人は思うのです。

最終的には医師の処方責任ですが、MRの介在なくして新薬の市場浸透は困難なのです。

もしも多忙で自らが訪問できないのであれば、何らかの方法で製品情報が到達するように気をつけてほしい。
社内で営業成績だけを見ていると、自社医薬品の最終消費者=真の顧客=患者さんに思わぬ損失を与えかねないことを、良識を持ったMRは決して忘れないで頂きたいものです。

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