2013年9月5日木曜日

【ブロックバスター懐古主義?】2013年9月1日

営業職であれば、計画を上回る好成績を確保できる状況は、やはり嬉しいものです。
MRの場合は「ブロックバスター」による好成績が代表例となりますし、この10年の低分子薬では高血圧のARB、最近では糖尿病のDPP-4阻害薬が似たような急成長を見せています。

多額のコストをつぎ込んだ創薬段階から、医療現場で支持される定番薬へと育薬に成功した関係者は喜びを隠しきれないわけですが、これをMR教育という面で考えるとそう単純ではありません。

売れる医薬品の担当MRが、その販売成績並みの資質を持っているかは、確認がとても難しいからです。

とくにこの10年あまり、ARBの大成功を経験したMRの場合は、その要因を本人の努力によるものだと言いきれないのではないでしょうか。

当初は画期的な新薬だと言いつつも、降圧を含めて基本的にはACEIやCCBと非劣性だと宣伝していたのに、いつのまにか「大定番かつ、付加価値が大きい最強薬」のようなイメージ作りに各社が成功していました。
学会ガイドラインや、降圧効果が強いCCBに新薬が出なかった影響もあり、ARBを扱う各社に追い風が吹き続け、ブロックバスターの余韻に酔うMRが多くなったわけです。

かつて、管理人が某企業の経営幹部と面談した際、「ARBの成功体験は、自社のMRにとっては重い課題になる」といった趣旨の発言がありました。
ARBが当初予定よりも爆発的に売れたため、担当MRたちが実力以上の成績を達成してしまい、今後の新薬上市時にモチベーションの低下を招くのではないか、という懸念です。

こうした成功体験は、一種の”MR成績バブル”なのですが、SOVの簡単なディテーリングでも成果が出てしまう以上、それで十分という言動になってしまう。
低分子薬のブロックバスターで素晴らしい実績を残したMRが、次の担当製品で同様の結果を残せるかは怪しく、逆に「あの頃(ARB担当時)は良かった」という懐古主義になりかねないのです。

MRの教育に関わる管理人としては、医師として診療も行う立場から、なかなか複雑な心境になります。
つまり、ARBのように副作用が少なく、降圧効果が長時間安定している薬剤を選択することは患者さんのメリットになる一方で、担当MRの手抜きを生むかもしれない。
医師が、MRの質を低下させる処方決定をしているとも考えられるからです。

主力品ですから、製品名入りの各種ノベルティグッズは大量に配布され、記念講演会は盛大に開催され、研究会の前座はいつも大定番のARB。
担当MRは資質に関係なく、全国どこでも良好な成績が残せるために努力を怠り、ディテーリングの質が低下する。

つまり、医師がARBを安直に処方→ARBが売れる→担当MRの成績が向上→年単位で安定した成績が見込める→必要以上には努力しなくなる→ディテーリングの質が悪化する→でもARBは便利なので処方する、といった奇妙なサイクルが成立してしまうわけです

この状況が最近ではDPP-4阻害薬でも起こりそうですが、降圧剤よりも血糖降下剤は副作用リスクが大きいので、果たしてどうなるでしょうか?

そんなARBも特許切れによって、すでにジェネリック医薬品に切り替わりはじめ、医療費抑制が叫ばれる中では有名ブランド品のシェアが急速に低下する可能性があります。

ARBは高価な薬剤につき、高コストなMR活動を10年以上も支えることが出来ましたが、今後はどうなるのか不安になるところです。
さらには、”ARB的な”MR活動に慣れ親しんでしまった人たちが、もっと難解で使いにくい新薬を担当するときに、実力不足を痛感する事態になるかもしれません。

「ARBが売れまくった時期は良かったなあ」と社内飲み会で愚痴るMRが増えるのか、「ARBは、もう昔の話さ」と割り切れるMRが増えるのか、今後も要注目ですね。

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