2013年9月5日木曜日

【売れないMRでもいい】2011年11月6日

◆営業成績は当然、重視されるべきだという意見も理解できます。売れずにマイナーな製品になっては困る、というのも本音ですから。

◆この記事についての賛否は、きっと皆さんのご状況によって変わるのだと思いますが、管理人なりのエピソードとして、再掲いたします。

 『当時、私が赴任していた市中病院では、MRの訪問は制限なしの状態にあった。
 朝、駆け足で医局へと急いでいると、まだ午前8時前なのに数人の担当MRがきちんとしたスーツ姿で出待ちをしている。
 眠気の抜けない私が怪訝そうに来訪の理由を聞くと、卸や営業所に行く前に、医師への「ご挨拶」のため、まず病院に来ているのだとか。
 こちらはその日の業務を思い浮かべながら白衣に着替えて病棟へ向かうわけだが、数分後にMRが増えていたときは、もはや苦笑するしかなかった。

 午前外来の後、昼休憩時間には診察室前にMRの行列ができる。
 生活習慣病関連で多数の患者を抱えている外来医との面会は、診察に引き続いて外来ブースで行われるので、MRは受付に名刺を出して順番待ちをしていた。
 患者が並んでいた椅子に、MRたちが静かに座っている不可思議な光景は、同業者としても大きな衝撃でもあった。
 担当MRたちは「ゴマすり目的で訪問している?」と思うほど、上手なヨイショの連発が、別ブースにいても良く聞こえた。

 けれども当時の私にとっては、これが“普通の”MR像であった。担当MRたちの人柄の良さと、普段の営業活動との落差が大きい真の事情は理解できなかった。
 夜の飲食接待も各社が趣向をこらしており、いつもタクシー送迎付きで名店の美酒美食を経験できた。私は接待以外で、ふぐ料理を食べたことがない。

 そんな中で、営業用の黒カバンに大量の文献を入れて訪問する若い女性MRがいた。
 彼女が他MRと違っていたのは販促パンフレットよりも、海外文献や医学雑誌のコピーを提示しながら製品説明をしたがる点だった。関係する原著を探し出し、営業現場で提示するのは数年目の彼女には荷が重いのでは? と思った。
 専門分野の医師が書いた文献について、自らの見解を付けながら説明するMRは本当に珍しい。宣伝活動のほかにも、多くのエビデンスを余計に勉強しなければいけないからだ。

 「私は売れないMRでもいいんです」と彼女は言っていた。営業成績も大切だけれど、”正しい情報を先生方へ届けるのがこの仕事だ”と。
 ドキッとした。医師も皆、目指す方向は同じはずなのだ。

 しかし旧態依然とした会社と合わなかったのか、彼女はしばらくして部署異動後に退職したと聞く。
 正直者がバカをみている。私がMR向け提言を始めたきっかけは、その状況を無言で放置している業界への強い怒りであった。』

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。