2013年10月22日火曜日

【くすりやさん】 2013年10月21日

会社の名刺を何度見直しても、MRの顔や名前が思い出せない。
いつ、この名刺を受け取り、何の話題で談笑し、そもそも担当医薬品は何だったのか、さっぱり記憶がないという場合です。
もちろん、現在や昨年の担当MRであれば完全に忘れる場合は少ないでしょうが、数年前くらいからは怪しい・・・、という医師は多いかもしれません。

この原因は、何でしょうか?
管理人としては医師業界の、日常的な呼び方にも原因があると考えています。

医療機関の大小に関わらず、MRに対して、普段の呼び方は「**さん」のパターンがほとんどだと思います。

例として、製薬企業名をおもに使うのであれば、医師がMRを呼び止める際には「エルゼビア(製薬)さん」となります。
担当者の名字であれば対面で失礼にならないでしょうから、「高槻(浩介)さん」となります。
ビジネス場面ですので、名前で呼ぶことは少ないでしょうが、年長者からは親しみをこめて「浩介くん」と呼ばれても不思議ではありません。

さて、医師の世界では製薬企業の旧・プロパーやMRを、「くすりやさん」と呼ぶ習慣がまだ残っています。
少し年配の医師になれば、今でもMRを「くすりやさん」と呼んでいる割合が高いかもしれません。

これは院内でも「看護師さん」「薬剤師さん」と、氏名ではなく、職業名で相手を呼ぶ習慣が残っているからだと思います。
医師が他職種よりも高い位置にいるような印象を持たせますので、分かっていて名字を呼ばないのは好ましくありませんが、MRも院内でこの呼び方を聞いたことはあるでしょう。

反対に、看護師から「医師さん」といきなり呼ばれたら、プライドの高い医師は不機嫌になるでしょうが、医療業界には「先生」という万能の呼び方があるので、大きな問題が起きない。

もちろん、医師から「MRさん」と呼びかけられても、製薬企業にとっては大切な顧客ですので、失礼とは扱わないことになります。
廊下で呼ばれないよりは、職業名であっても、処方権をもつ顧客から呼び止められる事実が大切だからです。

「くすりやさん」には、製薬企業からやってくる便利屋さん、という意味が隠れていることがあります。
怪しい便宜供与が排除されている現在は少ないかもしれませんが、「くすりやさん」には医師の執事のごとく、昔から色々な手配をお願いできたわけです。

10年ほど前であれば、講演会の聴講に関わるタクシー手配、原著論文のコピー依頼、全国学会への交通・宿泊手配、食事場所の確保など、当たり前のように多くの医師がMRに依頼していました。
学会スライドの作成や印刷すら、担当MRを経由して専門業者に発注できたわけで、雑用を含めてまさに有能な執事の役割を長年果たしていました。

駆け出しの内科医だった頃の管理人も、上司から「(面倒な作業は)くすりやさんに頼めば?」と普通に諭されたものです。
(ちなみに、学会会場周辺のホテルは製薬企業があらかじめ確保しており、有力医師はMR経由で部屋を譲ってもらえるという噂も)

つまり、MRを「くすりやさん」と呼ぶ医師が現在でもいる場合、それはMRに対して”執事的な振る舞い”を暗に期待している、ということかもしれません。

とはいえ、2012年4月からは接待の自主規制が開始され、2013年からは医師・医療機関への企業資金が公開されているように、製薬業界は大きく変わっています。
米国内の製薬企業に関わるサンシャイン・アクトでは、医師への10ドル以上のあらゆる資金供与について公開となっていますので、日本もいずれは似た状況になると予想されます。

さらには、日本では2014年から医師個人への支払金額が公開される予定ですから、「くすりやさん」に対して安易に依頼した内容がマスコミで集計され、悪徳事例は週刊誌で糾弾される事態になるかもしれません。

現在でも医師から「くすりやさん」と呼ばれる場合には、「私の職業はMRです」と、上手に言い返すことが必要です。

「昔は何でも気楽に頼めて便利だったのに・・・」と愚痴る医師に対しては、「先生に関わるお支払い額は、来年、実名で各社から公開されます。もしかしたら、マスコミが狙っているかもしれませんね、怖いことです。」と、MRから説明しておけば良いでしょう。

顧客との関わり方がビジネスライクに、かつ正当な内容へ変わっていくには、「くすりやさん」と呼ばせない状況作りが必要です。
長年の慣習を塗り替えるひとつとして、「脱・くすりやさん」をMRが目差していくべきでしょう。

当然、医師自身の意識変革も必要ですね。

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