2013年12月8日日曜日

【MRの成長速度】2013年12月6日

各製薬企業でMR研修に関わっている管理人ですが、本社側で活躍する講師陣やベテランMRと話していると、いつも共通の話題で盛り上がります。
「昔は、もっと先生方(医師たち)の傍にずっと長くいて、たくさんのことを教えてもらった」という回顧です。

現在のように訪問規制が厳しくない時代、MRは院内の廊下だけでなく、医局や病棟、手術室やカテーテル室にも相当数が出入りしていました。

行動価値を認められた”メーカーさん”は院内をかなり自由に移動でき、「夜遅く、先生と医局で麻雀をしていた」などという豪快な話も聞くくらいです。
患者プライバシーの保護という点では大きな問題がありますが、かつてのMRは、”OJTが院内で毎日”という環境に恵まれていました。

雑談から専門的な話題までMRは自由に質問ができ、夜の飲食付き合いもある医師たちは、そのようなおおらかな関係性を受け入れていたわけです。
医師にしても、MRがいつも院内のどこかにいれば話しかけやすく、MRは医師を発見しやすい。

面会自体に規制がかかり、数十秒のディテーリングを練習してから訪ねることに慣れている若手MRにしてみれば、「おおらかで良い時代ですねえ」という感想を持つでしょう。

各種データを見比べていても、MRが医師と出会う時間は、年々短縮していると思われます。

MR数は約6万4千人にまで増加しましたが、医師数は約29万人で大きな増加はありません。
臨床現場が大学病院・GP・HPと違っても、MRと医師が対面することは同じなので、MR一人が出会える医師数は減りやすい。

さらにはコール数確保の頻回訪問や、訪問規制による面会の困難さ、製品数の増加なども影響していきます。
結果的に、MRは医師と出会いにくく、一緒に過ごす時間が短縮するため、顧客側の情報を得にくくなったわけです。
製薬業界の自主規制で接待が激減し、MRの人柄や性格が分かりにくくなった、という医師の意見も耳にします。

とくに深刻なのは、MR教育において、処方決断をする医師たちの”診断根拠”を、会社側が教えにくくなった点です。

自由訪問のため、医局で医師たちに直接質問できた時代は、教育側もMRも深く悩む必要がありませんでした。
こまめに訪問すれば、対面でそれぞれの診断根拠を教えてもらうだけの時間的余裕があり、さらには飲食接待の最中に細かく聞くことも可能だったのです。

「足で稼げ」は「直接会って学んでこい」と同義でもあり、医師から教育を受ける究極のOJTを兼ねていました。

医師の診療というのは、2択問題の連続です。
処方をするか、しないか。
検査をするか、しないか。
告知するか、しないか。

疾病の治療では、患者それぞれに対する膨大な選択肢の中から、最短経路で解答を求めるフローチャートのごとく、たくさんの2択を繰り返していきます。
しかも脳内では猛烈なスピードで決定していくので、診療の深い内容は、部外者には理解しにくい。

MRの立場としては、自社がターゲットとする患者に対して「担当製品を処方するか、しないか」の選択につき、医師から思考結果を聞き取ることが重要なのですが、医師と一緒にいなければ口頭では教えてもらえません。

社内で悩むより、処方をした医師本人の考え方を知ることの方が、ずっと早く、重要なのです。
さらには、医師が悩んだ結果の選択をMRが学ぶことで、MR自身の思考も磨かれ、もっと専門家寄りになっていきます。

管理人としては、MRの成長速度は、”医師と過ごす時間が長いほどに速くなる”という仮説を立てています。

反対に、医師と出会えないMRの成長速度は遅くなり、かつてのような良質な院内OJTができないために、いつまでも自社製品の知識に頼るだけになりがちです。
社内テキストをなぞっただけの解答を繰り返すMRは、多くの医師から飽きられてしまい、あちこちで面会時間が確保できない。
医師から2択の選択基準を聞き取ることができず、医療現場の知識を吸収できず、MRのスキルが低迷する。

経験年数の割に成長ができていない、未熟なMRが増える要因になるのです。

かといって現在は、医療現場にMRの滞在時間を延長するように頼める状況でもありません。
患者プライバシーの保護は最優先されるべきことで、カルテの内容を医師から教えてもらう時代はもうやってこないわけです。

今後のMR教育は、社内研修でかつての”院内OJT”にあたる内容を、現役医師と一緒に行う方向になっていくと管理人は考えています。

すでに先行して実践してきた製薬企業からの反響も分かっており、”医師とMRが出会う”時間を延ばすには、社内へ医師をトレーナーとして招くしかない、と思っています。

プロパー時代の豪傑エピソードには、医学教育に通じる深いテーマが隠れていると、管理人は実感しています。

それはMRを急成長させ、医療現場に馴染みやすくし、結果として製品が”売れる”。
MR教育は、医学教育に似てきているのです。

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