2014年2月20日木曜日

【扉を開けて最初の10秒間】2014年2月17日

廊下でゆっくり深呼吸をしてから、ガラガラと院内の扉を開ける瞬間は、どのMRでも緊張すると思います。
第三者として遠目にMRを見ていても、その動作や雰囲気には緊張の色が混じり、あえて明るく振る舞うのが伝わってきます。
「失礼いたします!」の大きな声とともに面談場所へ入る際は、皆さんもまるで就活生に逆戻りしたような気持ちになるかもしれません。

診療をしている医師の場合は、自らが特定の空間に入っていくよりも、相手(患者さん)が扉を開けて入ってくる場面に慣れています
診療所であれ病院であれ、複数の外来ブースを担当している場合でも、医師が出向いて患者さんを呼びに行く仕組みは少ないでしょう
そのため、ずっと椅子に着席しているのが一般的な診療イメージですし、事実、医師はトイレに行く余裕すらないという多忙な外来も多数あるわけです。

医療面接としては、扉が開いて相手の顔が見えたところから、表情・仕草・歩き方・言葉遣いを注意深く観察することが基本です。
「今日は少し活気がない」とか「膝の調子が悪いのかな」という発見をすると、医師はそれらを診療でのやりとりに含めて検証し、患者さんにとって最良の治療法を探っていくのです。

これは職業的な習性となっているので、どの専門科であっても定期外来を担当していれば、たいていの医師は診察室での”最初の10秒間”に注意を払うことになります。
ぼんやりどこを見つめているか分からない表情であったり、カルテやPCから目を離さないような医師は、何かの事情があると思って良いでしょう。
「こちらへどうぞ」と医師が和やかに促して、会釈や挨拶を交わしている瞬間、その相手は注意深く観察されているわけです。

MRと患者さんは同じ立場ではありませんが、オンタイムで医師モードになっている顧客と面会する場合、「先生は相手を観察する状態になっている」という意識が必要です。
営業活動だけでなく、医薬品情報の提供にも訪れたわけですから、ここで他社よりも存在感を発揮したいというMRの前向きな気持ちは分かります。
しかし、扉を開けて入る場合には、声がけの時点で医師の注意が向いていると考えるべきで、活発さをことさらに強調する意義は乏しいでしょう。

「おお、今日は何の用件?」と質問をしてくれば、医師はMRに集中している証拠ですし、それをMRがあえて乱す意味もないのです
始まった最初の10秒間で、ビシッと掴む言葉をかければ良いでしょう。
「お疲れさまです。本日は、新製品の市販後6ヶ月データをお持ちしました」といった具合に、用件を宣言してしまうべきです。
これは患者さんが「先生、今日は腰がひどく痛むんです」と主訴を告げるのと、同じリズム感になります。
医師がもっとも自然と反応しやすい、顧客にとって得意のシチュエーションなのです。
最初の10秒間の流れがスムーズであれば、勉強してきたMRも実力を発揮しやすいことでしょう。

ところが、社内でのディテーリング練習中、医師の関心をひきつけたいがために、最初の10秒間をアイスブレイク的に使ってしまう場合も見かけます。
「先生、昨日のオリンピックはご覧になりましたか?**選手、凄かったですよねえ」といった具合です。
残念なことに、医師が前夜は当直中で五輪中継を観られなかった場合、「MRは余裕があっていいねえ」という余分な心証を与える結果になりかねない。
自らのペースに持ち込まなければ、という意気込みは理解できるのですが、院内はあくまでも医師たち医療従事者が主役。
扉を開けるという行為には、顧客側の慣習に入り込むという面もあるのですから、その中でわざわざ塞き止めるような言動は避けたほうが良いと思います。

今夜も各地の診察室前でMRが待機しているのですが、次に開ける扉の前では”最初の10秒間”を意識し、医師からの呼び水に乗ってみましょう。
にこやかに最初の10秒間を過ごせるMRとは、その後もたくさんの意見交換ができるわけで、医師からの信頼も高まります。
こうした仮説をいつでも自ら試せるわけですから、MRという職業には現場に出入りしている面白さがたくさんあるのだと思います。

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