2014年2月23日日曜日

【アルファベット略語で表現?】2014年2月22日

平凡な若手医師だった管理人が、ひょんなことから製薬企業のMR研修に関わるようになって驚いたのが、内向きなコンセプトの氾濫でした。

多くの製薬企業が、MRや社内を鼓舞するための概念を掲げており、廊下の壁には立派なポスターが貼ってあったりする。
管理人はコンサルタントとしても活動しており、診療以外の講演やセミナーのために、一般的な医師よりも数多く、各製薬企業を訪問しています。
同じ医療関係でも、世界中のマネーが関わるビジネスの世界は全然違うなあ、という勝手な実感を抱いているのです。

「患者さんのために」「医療従事者からの信頼を得よう」「適正使用の推進に努めよう」といった内容は、診療医の立場でも普通に理解できます。

就活生向けサイトをのぞけば、各社が工夫をこらした立派なコンセプトを掲げていて、MRに詳しい管理人としてはモノは言いようなのだな・・・と感心したりもする。

難しい事実を隠さずとも、”より良く見せる”のは企業広告の常套手段ですし、中途・転職組を含めて優秀な人材を集めるためには、MRの理想像をああやって打ち出すこともアリなのでしょう。

さて、内向きコンセプトには、業界内部でしか理解できない、アルファベット形式のものが複数存在しています。

管理人は当初、SOVと言われても頭の中に疑問符しか浮かばなかったですし、コールと言われて飲み会のかけ声かと思うほどでした

Share Of Voiceと呼ばれる営業・マーケティング概念が製薬企業には浸透しており、コールという行為のカウントに自らが入っているという事実を知って、戸惑いを隠せませんでした。
もしかしたら、にこやかに院内で話しかけてくる担当MRも、コール数稼ぎやノルマ達成が容易な先生だからと、自分のところに来ているのかもしれない。
あの熱心さは社内成績確保のためのポーズに過ぎず、院外では好き放題に文句を言っている可能性だって少なくない。
”売れれば勝ち組”という発想を給与や待遇で裏打ちされてしまえば、泥臭く待ち構えて成績下位に沈むよりも、多少の冒険は許される・・・。

複数のFacebookページや、業界誌をまくれば、ちょっとずつ増殖したり入れ替わるアルファベット形式コンセプトを簡単に見つけることができます。

「SOM、OPD、MR+e」が瞬間的に理解できる皆さんは情報通ですし、それらを日々実践しながら成功しています!という、力強い意見もあるでしょう。
3つめは管理人が連載している老舗業界誌に登場するものですが、次世代MRはこれだ!的に格好良く、頻繁に打ち出されています。

とはいえ、このFacebookページが3年あまりにわたって、あれこれ書いているのと同様、MRの有り様については統一した見解を得るのが大変に難しいテーマです。

そもそも扱う医薬品が膨大な種類になっており、開発・製造・販売は自社一貫だけでなく、ライセンス売買やらコプロモーションやらが入り乱れています。

糖尿病の新薬であるインクレチン関連薬でも各社が入り乱れましたが、今度のSGLT-2阻害薬にいたってはコプロだらけで、MRの担当品を覚えるのは至難の業です。
卸のベテランMSがMR資格を取得してGP(開業医)市場を狙い撃ちするなど、価格交渉を担ったプロパー時代への先祖返りを果たすような事態すら起きています。

競合他社へ転職したら、同じ領域の製品なのに教育内容が違いすぎて、面食らうMRだって少なくない。
いや、うちには長期収載品ばかりしかないから、ジェネリックとの競争が厳しくて・・・等々、一口にMRといっても、どんどん状況は変化していきます。

”適正使用と普及、有効性や安全性情報の収集、医療現場へのフィードバック”が主なMR任務とはいえ、大部分の実態としては営業部員であり、評価も売り結果重視という矛盾は、個人レベルで工夫したところで解決するレベルではない難題です。

以前、『売れないMRでもいい』というエピソードを記しましたが、ただ売れないままだと社内成績で下位に沈み、高度な選抜研修には参加資格を得られず、再教育の対象者になってしまう。
心がけ(マインドセット)と成績が、常に合致しにくいという矛盾は、どの製薬企業に勤務していても解決しにくいのです。

だからこそ、MRは悩んでいる人が多い。

顧客からどのように評価されているか、MRとしての職業価値はどれほどなのか、最初の夢だった医療貢献は実現できているのか?
6万人以上の有資格者が、それぞれに葛藤し、乗り越えようとしている難題です。

管理人は、顧客サイドの医療従事者視点で、外部からのフィードバックを提示することで解決の一助になりたいと思い、こうした投稿を続けています。
有料業界誌での連載や、研修担当者向けセミナーも行いますが、本質部分を無料で皆さんに提示しているのは、向かい合う誰にでもヒントと出会う偶然が必要だからです。

個人的に、悩んだMRの心のスキマを突いてくる、営業系の自己啓発セミナーやこれで必勝的な本は、結局は役立たないと考えています。

処方を決める医師の思考を変化させ、納得の上で処方箋を変更させたり新規処方させるには、マインドやディテーリングだけではない高度な内容が必要です。

とりあえず分かったよ的な反応をする医師は、誤処方もしやすいでしょうし、面会中のMRには言わない診療思考でさえ、膨大な量です。
アルファベット形式コンセプトは、ともすればこうしたMRの悩みを予想外に拡大させる危険性があると、大いに憂慮しています。

健康雑誌や書籍に、とても現代医療とは相容れない怪しい健康法が乱立しているのと同様、各MRは玉石混淆のコンセプトから強い意志をもって選択する必要があります。

その結果に責任を持ち、どのようなMRでいるかは、もちろん個人の自由です。
ただし、医療産業は病気の人々がいるという大前提にのっとっており、人々の不幸によって潤う図式であることを決して忘れてはいけない。
たくさんの患者さんの生命や身体に関わって製品を販売している事実を、後回しにするコンセプトであれば結局、それらは廃れていくことでしょう。

管理人は多くの患者さんの最期に立ち会い、臨床医として医療産業の難しさに思い悩んできました。

誰かが担うべき社会的な役割を持ち、正式な資格を得た人には、それ相応の覚悟と姿勢が求められる。
製薬企業のMRが営業職とはいえ、やはり略語で正しい方向性を示すことができるような単純さではない、と強く思うのです。

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