2014年4月5日土曜日

【お金でつながる構図】2014年4月4日

ノバルティス ファーマ株式会社が関与したSIGN研究に関わる一連の経過は、国内の製薬産業および医師業界が抱えている危うい構図を、あらためて表面化させる結果となりました。


有名論文のデータ改ざん疑惑や、他社での誇大広告の疑念などよりも、もっと直接的であからさまな内容が、調査報告書には記載されています(下記リンク)。

一般の方々にとっては、難解な科学データの不正・改ざんよりも、営業マン(MR)たちの不正な労務提供のほうが分かりやすい。
しかも、イニシャル情報とはいえ、実在の白血病患者の治療経過に、営業的な意図をもってのめり込んだMRがいたという事実。

もちろん製薬企業だけでなく、安易に情報を漏洩する行為を行った医師たちも、患者情報の保護を怠った重大な責任があります。


NHKが最初に疑惑を報道した際、元社員とおぼしき人物が経緯を説明をしていたことからも、何らかの情報リークが報道機関側に持ち込まれたのかもしれません。

もしも上手に隠蔽されたままだったら・・・という懸念とともに、この問題はいくつかの象徴的な事項を含んでいます。

(1)大学病院の医師が、製薬企業の資金を使う医師主導型臨床研究によって、医師としての業績を立てようとした
(2)社内エースが揃うオンコロジーMRが、馴染みの医師の研究サポートに奔走した
(3)オンコロジーMRの上長は、社内での進捗報告を受けても、コンプライアンスを含む違反行為として制止しなかった
(4)どちらかと言えば、大学病院の臨床研究に深く関与することは、良いMRの行為として社内で高評価されていた様子
(5)労務&資金面でのサポートによって得られた臨床研究の中間報告が、一部のプロモーションに転用された
(6)医師としての業績、製薬企業の製品シェア確保、MRの実績が、もはや三位一体となっている
(7)患者は個人情報の漏洩に気がつくことはできず、医師が漏洩する自らの治療情報に対して、MRは営業成果としてコピーする
(8)証拠隠滅に走ったMRや、上長に対しては、解雇を含む厳正な処分が実施されている
(9)社長、副社長(持ち株会社社長)、事業本部長の3名が辞任に追い込まれた

各報道機関によってニュアンスは異なりますが、バルサルタン関連の不祥事に対する社内のコンプライアンス教育によっても、さらに違反行為が発覚した場合には、MR当人が解雇されるという、珍しいケーススタディが発生したと言えるでしょう。


これらの構図は、製薬企業も医師も、それぞれの理由で金銭的な繋がりを(見えにくい形態で)求めている、ということでもあります。

大学や研究機関への奨学寄付金だけでなく、製薬企業による財団経由での研究資金供与もありますので、まるで身体の血流のごとく、各場所で多額の資金が循環している構図なのです。
MR&資金面でサポートを受けた医師が、その製薬企業の製品をあえて処方しないようにする、という発想にはなりにくい。

どの業界でも、「タダほどコワイものはない」のです。


ノバルティス ファーマ株式会社の場合、他の事例も今年2月から調査中であり、奨学寄付金を一時停止するとのことですから、現在、資金面でサポートされている医師たちの研究活動・論文作成にも、大きな影響が出るはずです。
製品関連の好都合な研究であれば、学会速報・資材・ウェブ媒体などでどんどん紹介されますので、医師にとっても知名度向上につながる良い機会ですが、今後は慎重にならざるをえないでしょう。

先にあげた(1)〜(9)の構図は、製薬業界で資金力&営業力を誇る企業であれば、どこでも似た結果になりえます。

今後は黙っていて暴露されるのをおびえるよりも、進んで社内調査を行い、早く実態を告白してしまった製薬企業のほうが、株主代表訴訟を含めた経営リスクを抑制できるかもしれません。


透明性ガイドラインによって、医師個人への資金的なつながりが少しずつ明らかになってきた中での、今回の1件。
本当に真面目に活動してきたMRにも、悪影響が及ぶことは必至です。

一方で、「販売を伸ばすためには、有力医師・有名医療機関での浸透が重要だ」と考える営業部門が起こす不祥事が、企業イメージを低落させ、経営陣すら交代させる要因となるとも分かりました。

同様の事例が、他社を含めて今後も明らかになるかもしれませんが、非難するだけでなく、その構図・誘因は何か?と言う業界内部の事情も、明確に捉えていく必要があります。


医師も製薬企業も、昔ながらの商慣習や、あやうい資金関係に依存することを、変えなければいけない時期です。

http://www.novartis.co.jp/nilotinib/s/pdf/Report_20140402.pdf

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