2014年5月20日火曜日

【全国報道のインパクト】2014年5月19日

札幌東徳洲会病院の腎臓内科部長であった医師(諭旨退職)と協和発酵キリン株式会社(以下、協和発酵キリン)のMRなどが関与した臨床研究に絡む不適切な経緯は、瞬く間に全国ニュースとして、各媒体で報道されました。

「医師主導臨床研究」のはずが、医師のずさんさ&MRの熱烈さが事態を悪化させ、科学研究とは到底呼べないレベルのまま、血液検体収集などが進行していたようです。
報告書にあるように、立案および進捗についての各経緯にも呆れるわけですが、そもそもスタート段階から疑問符が並ぶような研究に対して、資金提供してしまった協和発酵キリンの現場にも大きな問題があります。

しかも、患者さんの氏名をMRたちが入手・保管し、データ入力を代行していたそうですから、完全にアウト。
医療上のプライバシー侵害よりも、社内での実績作りに熱中していたのでしょう。


とはいえ、「有力病院の部長先生に対して、サポート熱心な担当MRが足繁く通う」構図が、他人事とは思えない製薬関係者は多いでしょう。
すでに他社でも発覚してきた不祥事のように、MRは科学研究に直接関与していはいけないと社内で指導されていても、現実のビジネスにおいてその境界線は曖昧です。

学術と営業がもっと一緒くたになっていた頃は、「先生の研究をサポートできるMRは優秀だ」というのが、営業上でも王道でした。
処方を獲得するためのリレーション構築には、頻繁の飲食接待や資金面でのサポート、ついでに研究における労務提供までもが、それなりに許容されていたのも事実です。
こうした製薬企業による支援を心強く、そして都合良く捉えて、業績作りで"喜ばれる研究発表&論文作成”を続けてきた医師もいるはず。
学会発表や論文に「利益相反なし」と書かれていても、皆がメディアから金銭的な繋がりまでを追究されるわけではありません。
どうしても、曖昧な状況が残りやすい。





ちなみに腎臓&透析専門医である管理人は、協和発酵キリンと中外製薬株式会社の2社による激しい販促競争は、処方選択者として長年見てきました。

なかなか効能効果に大きな差異を示しにくい両剤が、次世代品を併売するようになってからも、いまだにしのぎを削る様相なのは、処方する側として複雑な気持ちになります。
先行したネスプ販売額の防衛のために「医師主導臨床研究」に深入りしたのであれば、ミルセラの追い上げがどれほど担当MRにとって直近の脅威であったか?
病院1カ所での販売を守るために、超えてはいけない一線をMRも学術も超えてしまうほど、毎月の数字作りに追われている厳しい姿が想像されます。


おそらく、こうした不適切な営業行為は現在だけでなく、過去10年分くらいを各社で精査すれば相当数が発見されることでしょう。

当時は問題なしとされていたサポート行為であっても、現在は1件のみで全国報道されるほど、世間の注目度が高まっています。
もし読者の皆さんや周囲で、同様の状況を知っている場合は、とにかく早く社内で対応する必要があります。
医師もこうした状況の激変を理解していれば、資金&労務提供の中止に対しても、表立って激しい抗議はできないでしょう。


これまで、製薬営業の現場は少数の関係者しか実態を目撃できない、ブラックボックスのような状況でした。

医師もMRも口裏を合わせて、不都合な真実を隠すようにしていれば、国民を含めて部外者は実態を掴めなかったのです。
交渉記録も日報レベルしか残らず、医師にいたってはメモすら取ることが少ない。
双方の記憶においてだけ、物事が再現されるような展開が普通でした。


ところが、バルサルタンの論文不正疑惑、カンデサルタンの誇大広告疑惑などが契機となり、報道する大手メディア側もこれらが「医師とMR」という小さな対面ユニットがきっかけになることを理解しました。

双方の記録が残っていなければ、研究関係の正当性を証明するにも、薄れつつある記憶をもとに釈明するしかありません。
「説明できない=怪しい=何か不正を隠している」と記者に判断され、"医師のスキャンダル&儲かっている製薬企業の不正行為"という、見出し文字が躍りそうなネタとして扱われます。
一種のMR通行手形とみなされてきた奨学寄付金は契約制に切り替わり、浸透している透明性ガイドラインと相まって、ますます金銭的な不正は追究されるようになります。

ここで情勢の変化に乗り遅れ、社内にコンプライアンス違反を多数抱えたままの製薬企業は、発覚が遅れるほど自浄作用に乏しい組織とみなされ、ステークホルダーからも見放されていくことでしょう。


全国報道が与えるインパクトは、"国民からの監視"という強烈なメッセージを、医療現場と製薬営業に与えています。

事実を隠したまま、患者である国民に望ましくない結果を与えてはいないかと、双方の関係者が人々の注目を集めているのです。
医師の研究は、スポンサー企業のパンフレットやメールマガジン、Webサイトなどで紹介され、医学の発展だけでなく宣伝にも引用されます。
科学的な誤りを黙認するのが、商業理由では許されません。


協和発酵キリンの場合、学会速報を含めて施設の大小に関わらず、医師の研究をメールマガジンなどの”kksmile”で熱心に紹介しています。
今後は、その内容だけでなく企業側の関与が、どのように適切であるかも付記する必要がありそうです。
「エキスパート」「ドクターコメント」「演題紹介」が並ぶ情報提供について、双方ともに潔白であることの説明を待ちたいものです。

http://www.kksmile.com/script/newslist.php?dsp=0

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