2014年5月15日木曜日

【ノバルティスのMR】2014年5月12日

昨今の論文不正疑惑&コンプライアンスに関わる不祥事で、有名外資系企業のブランドが傷ついたノバルティス ファーマ株式会社(以下、ノバルティス)ですが、世界最大の製薬企業となった現在、国内部門の立て直しが急務となっています。

バルサルタンに関わる研究・論文疑惑が報道される前までは、就活生にとっても転職組にとっても、有力な製品群を多く揃えているノバルティスは「勝ち組」の代表格と見られていました。

ところが、懇意にしてきた有名教授たちがマスメディアの追究を受け、企業としても厚労省から薬事法違反の疑いで刑事告発され、これまで経営幹部を務めた人々は辞職などで動静が分かりにくい状況になっています。
日本社会が求める医療インフラを陰ながら支えつつ、多額の利益を上げる製薬企業にとっては、医師との金銭的な癒着を大々的に報道される展開は、なかなか取り返しがつきにくい難解な事態です。

ただし、大手製薬企業は他社も驚くような奨学寄付金攻勢をかけてきたわけですし、"多額の資金提供&有力医師の囲い込み戦略"は、製薬業界では当然かつ鉄板の販売戦略とされてきました。

それが今や、贈収賄の構図となぞらえて追究されるようになっている事態は、医師として製薬業界の営業部門に関わってきた管理人にとっては、想像以上の激変です。
ちなみに近年は、他にもMSD株式会社での公正規約違反や、田辺三菱製薬株式会社での試験データ改ざんも問題となりました。




こうした所属企業の不祥事は、好調をキープしてきた現役MRにとっては、突然の「いばらの道」をもたらすことになります。

営業成績も確保しつつ、自信満々に各医療機関を訪問していたのに、報道機関による情報の拡散によって、事情を深く知らない人々からも「悪いことをした製薬企業の営業担当者」という厳しい目で見られる。

製品プロモーションの立案や進捗は頓挫し、講演会は中止され、ひたすら謝罪と釈明を続けていくような毎日になりかねません。
ノバルティスの現役MRは、2013年春頃から他社への転職数が増えたと言われますし、会社に残る道を選んだMRはさらに厳しいコンプライアンス研修を受けざるを得ないでしょう。
SIGN研究では、現役社員が複数解雇される結果となっていますから、残る道も決して安泰とは言えません。

また競合他社への転職に成功したMRも、「不祥事を嫌ってノバルティスから逃げ出した」という周囲の偏見を覆すだけの、明確な行動と結果を見せなければいけない。

MRのスキルは、担当製品群の効能効果と顧客評価に左右される面が大きく、他社へ移ったところで同様の成績を残せるかはまったく保証されないのです。
販売規模の小さい製品群を担当することになれば、当然のごとく顧客との信頼関係も、大手のノバルティス時代のようには築きにくくなります。

管理人としては、一連の不祥事報道を見ていて、ノバルティスの営業体制はいつから変質したのか?という個人的な疑問が消えません
他の医師の中にも、同様の感覚を抱いている人が少なくないかもしれませんね。

MRを目指す就活生の中では、熱血・体育会系の営業部門として有名でしたし、外資ならではの華やかさに憧れの声を多く聞いたものです。
決して悪い意味ではなく、あの熱い雰囲気に入りたくてノバルティスを目指した人が何人もいました。

また、かつての新卒・中途採用MRの研修に、管理人は複数回、関わった経験があります。

30歳そこそこの医師が一人で始めた活動で、業界内の認知度がなかった頃に、本社採用研修の機会を最初に与えたのは、他のどこでもなくノバルティスだったのです。

製薬業界の常識からは明らかに飛び出していた管理人を、外部講師として正式に招くほど、ノバルティスの営業研修はバリエーションが広く、優れていました。
初対面の中途採用の受講生から「私は糖尿病の医療連携パスを展開して、地域医療を向上させたい。先生と、ぜひご一緒したいです」と真剣に言われたときは、驚きを隠せませんでした。

あるときは担当営業所が顧客医師を複数、招聘しての実践的なMR研修を行っていました。

管理人や当時の上司たちは某ホテルの会議室に行き、現役の若手MRたちのロールプレイング研修の応対を行い、医師からの評価とフィードバックを行う研修もしていました。
おそらく2005年頃の話ですから、ARBの接待全盛期としては、かなり先進的な取り込みだったと思います。

2〜3年目のMRが必死に製品プレゼンテーションをしながら、とても焦っている姿が医師として印象に残り、それは個人能力の問題ではなく研修内容が問題だと気付いたのも、ノバルティスがきっかけだったのです。

他にも顧客への製品に関わる本社でのVTRインタビューや、患者の飲み忘れを防ぐための新規デバイスの試験配付等々、販促目的ではあってもそれなりに納得できるレベルの案を繰り出していました
実際に担当になったノバルティスのMRたちは、突飛な言動を取っている人もいましたが、全体には真面目できちんとしたMR活動をしていました。

製薬企業は詳しく分かっていない場合が多いのですが、各医師には「製薬企業別のMR年表」のような記憶があります。

「あの頃は**さんが担当者だったな」「あのMRさんはカラオケが上手かった」「**さんは学会関係でサポートしてくれた」という雑多な記憶です。
そうしたMRの足跡が、各医師にとって企業への信頼を形作る要素であり、連続的な支持行為につながるわけです。
よって、担当者交代でのトラブルが少ない。

おそらく現在の製薬業界は、こうした各医師=顧客のMR年表を軽視しており、企業軸での販売戦略を押し付けることに熱中しています。

そのため、数字を求めるMRそれぞれのコンプライアンス遵守もおろそかになりやすく、不祥事の遠因を含むのです。
(バルサルタン関連もSIGN研究も、発端は担当MRが医師と話題にしたことが契機とされています)

もしかしたらトップの経営判断に、有力コンサルティングファームが作成するような、数字的な判断が反映されすぎているのかもしれません。


ノバルティスのMRは、自社の不祥事をどのように考え、"営業と学術の分離"という社内激変に対して、いかに対応するかを求められています。
それは、依然として続く「いばらの道」かもしれませんし、これからも他に不祥事が露呈して、再度の謝罪に追われるかもしれません

ただし、自らのMR活動が得てきた信頼は、企業不祥事のみで容易に失われる程度のものではないことは、自覚すべきです。
窮地のときに、卑屈な態度と愚痴を続けることは、ビジネスパーソンとしての成長機会を失う結果になるでしょう。
そのようなMRには、顧客サイドも信頼を置きたいとは思わないからです。
真面目に活動してきたのであれば、今は踏ん張りどころです。

そして他社のMRや関係者は、製薬業界が抱える根本的な問題を世間に露呈させたノバルティスが、どのような体制立て直しを果たすのか(または頓挫するのか)を客観的に見ることをお薦めします。

「うちは大丈夫」と思っている場合ほど、突然の危機に弱い組織はありません。
奨学寄付金が契約制へと変わる制度変更も起こりますし、やむなく社内の膿を洗い出そうとしているノバルティスに、いつの間にか大きな差をつけられてしまう可能性も考慮すべきでしょう。

不規則に展開している管理人のMR研修は、まさに一期一会で、その後の人生において二度と出会わない受講生が数多くいます。
しかし、そのときに真面目な思考時間を共有し、ともに過ごしたMRには、ビジネスパーソンならではの成功を獲得してほしいと思うのです。

新卒時や中途採用時に出会ったあのMRたちが、世界最大手企業の苦境において、どのような底力を発揮できるか?

現役医師の一人としても、あのとき会場で一緒に構想していた”患者志向”のMR活動が、営業体制の王道へと戻ることを強く願っています。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。