2014年6月21日土曜日

【業界常識が変わる】2014年6月16日

管理人がMR向けに講演をするようになった2006年当時、「医師と親しいMRこそ、優秀な営業人材」というのが、製薬業界の確固たる常識でした。

臨床医の立場で異論をとなえ始めた頃は、プロダクトの処方権を持つ医師との関係構築や囲い込みこそが、MRの主たる業務とされていたわけです。
現在でも、同様の発想で活動している製薬企業が多いとは思いますが、この数年間の規制強化で、その方法は大きく変化しました。

とくに2012年春からの接待規制は、全国の繁華街で医師を”おもてなし”していた長年の業界慣習を縮小させました。
ほろ酔い加減のMRとカウンターで並んで、公私の話題で盛り上がるという経験が、医師の仕事においては過去のものとなりつつあります。

講演会後の慰労飲食は続いていますが、単なる顔合わせ目的の宴会が廃止されたことで、営業コスト削減にとどまらず、MR業務の健全化につながっています。
(医療関係者以外との飲み会は、相変わらずのようですが)

"飲酒に強く、宴会芸とカラオケに長けていて、愛想と根性でプロダクトを売る"MRが高く評価されていた時代が、ようやく終わったわけです。
ベテランMRが、夜の街で華やかに活動していた頃を懐かしんでも、医療費抑制が国家の重大課題となった現在では、派手な営業攻勢が復活する理由は見当たりません。

そして、医師と親しくなるためのもうひとつの手段であった「先生方の研究をお手伝いする」プロモーション活動も、大規模臨床試験に関わる各種報道の通り、完全にアウトとなりました。

バルサルタン関連だけでなく、10年前、いや5年前であれば、社内でも医師でも許容してしまうような、"おおらかな=いい加減な"業界常識があったのです。

その遠因は、公的医療機関の公務員医師(みなし公務員も)に対しては、倫理規約によって飲食供応が以前から規制されていたため、研究業績のお手伝い(労務提供)が非常に有効だったという状況にあります。
しかも国公立大学は周辺の医療機関や薬局に対する影響力が大きく、山の頂点を押さえれば麓まで自社優位の処方傾向を波及させやすくなります。
ブロックバスターの連発とともに、講演会や研究会を多数開催し、プロダクトの布教を行うかのごとく多額のコストを投入してきました。

社内の優秀人材である大学担当MRにとっては、「親しさ、研究支援、プロダクト宣伝」という3つの要素が、非常に重要とされてきたのです。

旧帝大系医学部のブランド力に期待し、KOLたちの業績作りに支援の手を差し伸べる、という製薬企業の営業方法は、結果的に2000年以降の大ヒット製品を生む要因となりました。
海外開催を含む有名学会で、誇らしげに研究成果を発表するKOLの医師にとっては、素晴らしい業績を残した医師という名誉を得ることができます。
全国を行脚しながら、講演者として多くの医師に対して立派な業績を説明するときの優越感は、ある種の中毒性すら持っていたのではないでしょうか?





けれども、こうした馴染みの医師と共存共栄を図る戦略は、科学的な不正行為を発見しにくくなる副作用を生み、今ではそれらの製薬会社が糾弾される状況となっています。

医師にとっても、曖昧に放置しても問題とならなかった製薬企業との金銭的な関係を、第三者から厳しく追究されるリスクが高まっています。
明らかに不当な高額報酬が医師側へ支払われていないか、報酬に関して納税は適切に実施されているか、という疑念に対して説明する必要も出てくるでしょう。

製薬業界の場合、お金を出す側が特別な見返りも期待せずに、気前よくどんどん支払うという構図は起こりにくい。
贈収賄に近い状況で、それなりの金額が双方にとって意味ある動きをしている、と考えるべきでしょう。
それらを国民が報道で知るまでに、かなりの時間を要したわけです

臨床研究に関与できるMRは優秀だ、という業界常識が外圧によって変化していけば、「学術と営業の分離」が次なる経営課題となってきます。

社是では”患者中心”と言いながら、結果的には医師からプロダクト支持率を上げることに邁進し、国民が知らないまま不当な利益すらあげたのではないかと疑われる現在。
業界常識の急速な変化は、自らの望ましい進化とは言えませんが、企業やMRの存在意義を保護するための防衛策に終始してしまってもいけません。
そして、長らく「くすりやさん」に多大なお世話になってきた医師にとっては、我々の業界常識が世間に通用しなくなっている事実を直視すべきです。

今後の業界常識は、金銭的な関係の契約化、さらには臨床研究とMRの隔離が主流になることでしょう。

知識人として正当な報酬であれば、契約に基づいて医師は堂々と受取り、製薬企業も必要なコストとして一般公開できるレベルで妥当額を支払う。
MRは、科学研究について余計なバイアスに関与する危険を回避し、もっと本物の臨床に近い立ち位置で新たなプロフェッショナリズムを探求する。
患者が知らないところで、一方的な損害を受けないためには、このような厳格化がどうしても避けられないのです。

常識が変われば、営業マン的な言動でもOKとされてきたMRが、どのような役立つ知見を蓄えているか、さらに注目されるようになります。

夜の飲食接待が減ったことで、女性MRが日中において対等に活躍しやすくなり、育児との両立についても継続の可能性が高まります
昔ながらの男社会で偏屈な面がある製薬業界が、外圧による大胆なスイングバイを実現し、医師と共同で業界常識を塗り替え、健全なMR価値を作り上げて欲しいものです。

管理人は今年度も数社でMR研修を手がけていますが、「先入観と教育内容の変更だけでも、MRの伸びしろは相当に大きくなる」と実感する日々です。
これだけの潜在能力をもつ人々が飛躍しなければ、もったいない。

経営陣やマネージャークラスも、変わりゆく業界常識に置き去りにされないよう、第三者からの外圧に関心を払うべきでしょう。

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