2014年6月23日月曜日

【自画自賛の顛末】2014年6月23日

2006年当時のCASE-J広告記事を読み直し、先日発表された武田薬品工業株式会社(以下、武田)の調査報告書を確認すると、その顛末には溜息ばかりが出てしまいます。
インターネット上では、現在も下記URLのように閲覧できる広告記事があるので、読み直してみると良いでしょう。

" 日本人を対象にした疫学研究でも,肥満者の死亡リスクは増加傾向にある。
まさに,糖尿病,メタボリックシンドロームが増加しているわが国における21世紀の降圧療法の基礎治療薬として,カンデサルタンが大きな役割を果たすと期待できる。”
(メディカル トリビューン 2006年10月26日号 武田の提供記事)

自社のARBを今世紀の基礎治療薬と訴え、"極めて質の高い試験"と自画自賛していたCASE-Jですが、記事中にあるように真っ向勝負のアムロジピン群に対して降圧結果で劣ったにも関わらず、プライマリーエンドポイントの非劣性ばかりを強調する、不思議な結果でもありました。
今回の調査報告書で明らかになったように、中間解析ではアムロジピン群に優越性を示せず、糖尿病の新規発症というイベントを途中で付け加えていることを考慮すれば、約37億円というスポンサー費用をムダにできなかった関係者の意地が見て取れます。

さらに、多くの臨床医が仰ぎ見るような有名大学の教授陣がお墨付きコメントを出すことで、実際の科学性はともかく、臨床現場への宣伝効果は抜群でした。
タケダイズムを信奉しながら、各営業現場で熱心に活動するオールマイティな武田MRの宣伝もあって、カンデサルタンはブロックバスターとしての地位を守ってきたのです。

原著論文を吟味しながら厳しく批判する少数の医師たちを上手に黙殺し、スポンサー研究を学会ガイドラインに組み込むことで既成事実化していく手法は、国内最大手の武田に限らず、有名製薬企業の必勝法となってきました。

ある意味で、有名医師(KOL)を財政面で支援しながら味方につけ、多額の広告宣伝費を使えば、科学的な劣性も覆しながら大量に売れるという、一つのケーススタディを確立したのがCASE-Jです。

現時点ではデータ改ざんの痕跡なし、ということになっていますから、社長たち3名が更迭されたノバルティス ファーマ株式会社の不祥事とは違うぞ、というメッセージも調査報告書には含まれているような気がします。
けれども、そうした宣伝広告の実態を知りようがない患者にとっては、派手な営業攻勢をもとに医師が処方になびくという情けない実情を知るための、好例となることでしょう。


管理人も大学病院時代に、当時の赤坂プリンスホテルで開催された、CASE-Jの講演会を聴講したと記憶しています。
講演内容をぼんやりとしか覚えていないものの、手元に「ブロプレス8th aniversary」と記されたUSBメモリが残っているので、1999年の8年後、2007年だったようです。

このUSBメモリは容量が888MBで、発売8周年にかけて、縁起の良い末広がり(漢数字では八)を3つ並べるという、とても手の込んだ逸品です。
500人くらいは収容できる大きな会場内は、製品テーマカラーの黒色で飾られ、数面のプロジェクターを使いながらKOLの基調講演やディスカッションが行われていました。
しかし、講演内容そのものは特に感動するような話ではなく、自画自賛のオンパレードだったので、記憶も曖昧なのです。

それよりも強烈な記憶を残したのは、宴会場に移ってからの情報交換会でした。

2007年でも珍しい、大きな肩パッド入りのコスチュームを着た女性コンパニオンが多数、配置されており、バブル期さながらのファッションで給仕するというインパクトのほうが管理人には大きかったのです。
(赤坂プリンスホテルですから・・・)

優雅に会場内を歩き回るコンパニオンたちとは対照的に、壁際には多くのMRが生真面目に並んでおり、遠慮がちに医師たちの様子をうかがっている光景が、"製薬業界の縮図"のような気がしました。
聴講者たちのタクシーを含む交通費、会場代、コンパニオン費用、MRの人件費などを考えると、相当額を投じていたのだと思いますが、管理人の脳裏には"リッチな講演会と控えめなMRたち”が焼きつくばか

りでした。



思えば、どの業界にも、表と裏の事情があります。

熾烈なARB間の競争だけでなく、アムロジピンのようなCCB定番薬にも国内で勝利するためには、圧倒的な科学的成果を求める社内関係者がおり、それはKOLの業績作りとも密接に関わってきました。

とくに営業資金が豊富な創薬メーカーであれば、自社開発品を上市して育成する過程では、他社品を打ち負かす科学的な優位性を取りそろえておく必要が出てきます。
ARBなんてどれも同じ、では一般的には処方選択してもらえないかもしれませんし、"我が社だけのエビデンス”ほど欲しいものはないわけです。

お金を出せるスポンサー製薬企業と、世界的な業績を発表したいKOLたちの利害一致は当然のことで、これらを性善説だけで監視することは非常に難しい。
CASE-Jに限らず、怪しいお金の匂いがする国内エビデンスをどのように再評価するか、という難しい自浄作用を求められているわけです。


武田の場合、次期社長が外国人となる見込みであることや、創業家を含むOB陣が株主総会前に事前質問状を提出するなど、最近はお家騒動としての注目度も大きくなっています。

国内に巨大研究開発拠点を保有し、日本の産業界を代表する武田にとっては、CASE-Jを含む臨床研究への関わりを、この時期に深く追究されたくないのかもしれません。
営業上の特長であった全製品担当MRから、領域別MRへの体制変更を図るなど、特許切れ後の販売競争について、厳しい見通しをささやかれる立場でもあります。

自画自賛が特段悪いわけではなかった時代から、弁護士が過去の資料を掘り起こして事実関係を調査する時代。
製薬業界の常識が、急激に変わっているのです。

真面目一徹と言われる武田MRが、経営陣のゴタゴタをどのように見ているのかは分かりません。
けれども最大手ですら、お手盛り研究支援や、自画自賛型宣伝活動について冷ややかな視線を浴びせられるようになった以上は、MR本来の職能を磨き直すべきでしょう。

業界の模範とされている、タケダイズムに恥じないMR活動とは何でしょうか?

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2006/M3943601/

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。