2014年7月29日火曜日

【キーメッセージは当たらない】2014年7月28日

各製薬企業の社内で見かける、キーメッセージの数々。
掲示板やホワイトボードに貼り出されている文言を読むと、製品毎になかなか勇ましい内容だったりします。

自社&提携プロダクトの強みを前面に押し出したメッセージであるわけですが、管理人が疑問に思うのは、これらが顧客の医療専門職に対して、さほど大きな意味を持たない点です。
懇意にしている医師や薬剤師に、「**のキーメッセージをご存じですか?」と質問してみても、何のことやらという困惑の表情をされることでしょう。

すらすらと暗唱できるまでになった、MR活動に必須の文言たちが、顧客の心を打つどころか、芯にすら近づかない現実。
このままで良いのでしょうか?

大きな原因は、製薬企業が社内で生み出すキーメッセージがあくまでも自社都合に基づくものであり、顧客の意向を踏まえるような業界習慣がないことです。
優秀なプロマネやマーケティングが色々と知恵を働かせている、知的な努力の産物ながらも、その目的はプロダクトの販促とシェアの獲得にある。

しかも手強い競合品に打ち勝つため、プロダクト特有の弱点について、微妙に覆い隠す文言になりがち。
「強く、確実に、長時間」といった、まるで2時間ドラマのような定番の要素が混ぜ込まれて、結局は何が言いたいのか、伝わりにくくなるのです。

例として、架空の降圧剤Aを考えてみましょう。
この主力プロダクトには、それなりの長所と短所があるのですが、キーメッセージ作成上は、自社創製品ならではの良さを前面に出したい。

【長所】受容体結合率が高い、脂溶性に優れる、併用注意が競合品よりも少ない
【短所】単剤での降圧効果が競合品より10%劣る、1日2回内服、国内エビデンスが少ない

こうした場合、長所はこれでもか!というくらい強調することになります。

自社プロダクトAのキーメッセージ例:
「受容体との強固な**結合をもって、24時間安定した降圧効果を発揮」
「投薬後の速やかな脂溶性によって、有効血中濃度の変動が昼夜を通して少ない」
「Aとの併用注意については、**等に限られる」
といった、とてもポジティブな内容になるわけです(あくまでも、架空の話です・・・)。

担当しているMRも、ディテーリングや製品説明会で、これらを網羅してお伝えしようとする。
日常業務でもあるので、キーメッセージを疑う余地は挟まないようにするのですが、長所をひたすらアピールするのは顧客の飽きを招きやすい。
もう結構です、といった各施設での反応に落胆しながらも、コール数確保のために、MRは止めることができない。

しかも厄介なのは、同薬効の競合品Bでも、非常に似た内容だったりすることです。

競合品Bのキーメッセージ例:
「受容体親和性が高く、血中への再遊離が少ないことで、安定した降圧効果が期待できる」
「高い水溶性を持ちながらも、特殊な**構造を持つことで、優れた薬効を維持」

同薬効群について、各社MRから立て続けに(しかもランダムに)情報を提供される顧客としては、どちらがどちらだか、余計に分かりにくくさせられているようなものです。

今春発売のSGLT-2阻害薬でも、同様の展開になっているかと思いますが、大胆な各製品名とも相まって、キーメッセージの重要性が理解しにくい。
あくまでも自社都合で生み出される文言には、社内を鼓舞する意味合いが強くとも、ポジティブ要素を集結させ過ぎている傾向があります。




一方、製品の短所は、宣伝中のMRがあまり触れようとしない面ですが、処方に関わっている顧客としては、常に知りたい事項です。

完璧な薬剤など存在しないわけですから、よろしくない副作用や弱点を知ることで、望ましい使い分けをしておきたいもの。
医薬品の欠点を知ることで、結果的に患者を守ることができるからです。

先述の自社プロダクトAの短所を取り上げれば、
「単剤同士での降圧効果を比較した場合、収縮期血圧の降下度で4mmHg劣っているが、高齢者での過剰な降圧イベントが少ない」
「内服アドヒアランス上は、1日2回の内服が望ましいため、PTP外装に内服時間を見やすくマークできる仕掛け」
「国内の大規模臨床試験は未実施だが、欧米での試験結果から各種ガイドラインに10年以上採用されている唯一の薬剤」
というように、決してネガティブとは言い切れない、有用な情報も含まれるわけです。

先行したシェアを奪われたくないとか、優位性が発揮できないとかいう非科学的な発想よりも、事実を明確に述べてもらうほうが、選択をする顧客としては役立つ。
あくまでも、人間に投与するのが医療用医薬品なので、長所をいくら並べられても、使いこなしにくくなるばかりです。

となれば、管理人としては、勇ましいメインのキーメッセージと同様、あえて短所を打ち出した”サブ・キーメッセージ”も作るべきだ、と思うのです。

長所と短所を同等に扱うMRこそが、担当者としての信用に値するわけであり、各種の情報発信媒体においても、そのような扱いを重視すべきです。
サブな情報であっても、顧客や患者にとっては最重要なデータともなりうるわけで、覆い隠すよりは堂々と提供してほしい。

こうしたサブ・メッセージは、薬事法の規制はありますが、最大限の手段で日々、啓蒙すべきです。

販売に不利だからとか、上市後の状況があまり良くないけれど、という製薬企業の態度が、過去の薬害訴訟でも見受けられたように、企業のリスク管理として今後は無視できない。

顧客と医療機関内で対話しているMRに対して、メインとサブの両面をもってキーメッセージを本部側が伝達するようになれば、MR活動は単なる販促と呼ばれなくなることでしょう。
当たらないメイン・キーメッセージに振り回される状況から、サブも自信をもって把握できるMRへと成長できれば、その職業価値はさらに高まるのです。

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