2014年9月28日日曜日

【他流試合】2014年9月25日

製薬企業から個別のオファーを受けて、社内&守秘義務付きのMR研修を不定期に担当している管理人ですが、ときどき外部セミナーを担当することがあります。

多くの費用を要するMR研修は、自らの小さな事務所で企画開催するのは難しいイベントなので、どうしてもその登場機会は限られます。
さらに社費での参加を想定しているような外部セミナーは、受講生の所属先や勤務状況によって、当日扱うべきテーマが多岐に渡る。
1回のみの開催では、講師として伝えられる事項が限られるという問題もあります。

そのような中、今年11月から開催予定の「MR版課長塾」(日経BP社主催)は、全5回中4回を管理人が担当できる予定となりました。
企画段階から参加しており、既存の社内研修では実施できない独自プログラムを組み込んでいます。
週末の土曜日開催ですが、製薬企業の垣根をこえて、多くの皆さんにお会いできればと願っています。
 http://business.nikkeibp.co.jp/nbs/nbsemi/0930/mr/01/


ところで、こうした外部セミナーを担当すると、講師側にも色々な発見があります。

「自社内試合と他流試合の差を目撃できる」のです。
2006年から各製薬企業の本社・営業所でさまざまな受講生とご一緒しているので、現場感を積むたびに学ぶことが増えています。
少し説明していきましょう。


各企業で社内研修に出向くと、受講生や研修部から飛び交う略語が完全な「自社言語」で、医師であってもさっぱり分からないという場面が出てきます。
医薬品名はほとんどのケースでアルファベット略語化されていて、日常的に処方する側であっても「何のことやら?」と戸惑うわけです。

社内の会議名すら略語化されているので、手渡された当日の進行表を読んでも、その内容が分からなかったりする。
医療機関内で医師として勤務しているだけでは知り得ない、製薬企業の裏側を目撃するたびに「各企業ごとの雰囲気」を深く考えてしまいます。

自社内でビジネスを進めていく上では、関係者だけが理解できる略語やデータを内向きに共有しているほうが、何かと都合が良かったりします。
外部への情報漏洩は厳禁ですし、かなり大きな金額を動かす製薬業界では、動向を秘匿しておくべき事項が少なくない。
医師は日常のMR活動が気にかかるのですが、その舞台裏には膨大な準備を欠かさず、相当の経費をつぎ込んでいる”社内ビジネス”が存在しています。
しかも100年単位の伝統を持つ場合や、世界規模のM&Aでの組織改革も続いている。

よって、各製薬企業には雰囲気があり、「A社は体育会系」「B社はおとなしい」「C社は保守的」「D社は革新性を目指す」といったジャンル分けが出てくる。
あくまでも漠然としたイメージなのですが、自他共に企業ごとの色づけを好む場合もあって、ライバルとの差別化&優位性と捉えているわけです。
ブランドと同様、雰囲気は社員の言動にも大きく影響しますから、自社言語を流暢に使いこなしつつ職場に馴染み、「いかにもA社らしい人」といった印象を与える。

日頃から自社内試合でばかり勝負していれば、他社の同水準の担当者と汗をかきつつ、切磋琢磨する機会はとても少ない。
社内向けのビジネス定義を律儀に守っているほうが、出世競争にも有利です。


ところが、これらは外部セミナーになると、様相が一変します。

まず、受講生同士はほとんどの所属先が異なり、扱う製品分野も得意な領域も、ランダムに集合します。
いつもであれば、自社の言語とビジネス定義で進められる&説明できる事項も、他社の人たちに正しく分かってもらう必要が出てくる。
さらに講師を務める管理人に対しても、医師が日常的に理解できる医学水準への”翻訳”を行わなければ、言わんとする意味が伝わりません。
自社の雰囲気で、自社の略語で、自社のスタイルで、という「いつもの方法」が通用しない。

他社の人たち&講師役の医師という、身近に常駐していない人たちと数時間をひたすら過ごせば、外部セミナー中は外国語を使って意思疎通しているような違和感が生じるでしょう。
自社の確固たる常識や理論が受け入れられず、主力品の長所とされていた事項が他社では短所とされていたりと、直面する事実に驚きも隠せなくなります。

内心では窮屈な時間であっても、他社の人たちと自由闊達に議論する「他流試合」は、受講生それぞれに自社適合の思考パターンを修正させる働きがあるのです。


講師側からは、競合品を販売している人たちが特定の事項に対して、どのような意見を述べるかが非常に興味深い。

処方する医師としての視点、担当講師としての視点、製薬企業の顧客としての視点を、3つ揃えて考える機会は、通常の医師人生では起こりえないからです。
俯瞰的に考える意味では、このような外部セミナーは管理人にとっても他流試合です。
当初の予定と異なるセミナー展開になったとしても、受講生との有機的な議論は楽しいですし、医師としての技量や見識を直視されている以上は逃げ隠れもできない。
慣れた診療とは異なるエネルギーを激しく消費し、帰宅後はそのまま倒れ込むほどです。


他流試合を積むことは、結果として「医療の最終消費者=真の顧客」である患者を考える行為につながります。

医療産業において、自らがいかに素晴らしい人材であると自負していても、その価値を最終的に決めるのは患者です。

患者を最優先と言っておきながら、その視点の醸成に悩んでいる企業は、他流試合が少ないことが困難の原因でしょう。
講師と受講生で起こる偶然のマッチングから生まれる視点がなければ、受講生同士での熱い議論がなければ、患者視点は自社都合の「当たり前の話」で完結してしまいます。
そこに次の段階は生まれない。


製薬業界のビジネスモデル全体をあれこれ調べてみても、他社を招いて意図的に他流試合を繰り返している事例は少ないようです。

いや、既存の常識から外れているのかもしれません。
営業・研修分野の管理人が担当する外部セミナーは、珍しい他流試合のひとつですが、つねに「自社都合からの脱却&真の顧客は誰か?」を根本的なテーマに掲げています。

何となく、とりあえず、今のところは・・・と躊躇していると、競合他社が一気に追い抜いていく可能性が高まります。
この事実に自らが気づくだけでも、他流試合の意義は大きい。


「製薬の営業モデルは限界でしょ」と諦める前に、やるべきことは残っていると管理人は思っています。

まずは他流試合を経験し、さらには次の試合準備を続けること。
個人でも企業でも、他社の人たちと多く出会い、正面から熱い議論を挑むことがさらに必要となっているのではないでしょうか?

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