2014年12月21日日曜日

【抑揚の重要性】2014年12月11日

この数年、各製薬企業でMR研修を担当していて気になるのが、MRの話し口調です。
対面ディテーリングや製品説明会、さらには廊下での鉢合わせなどを想定した実践形式の研修で、どうにもMRの話し方が気になるのです。
本物の院内とは違う架空設定であり、上司や同僚が間近で観察しているという特殊な事情を差し引いても、トレーナーを務める管理人のモヤモヤは消えません。

口癖や言葉数、発声に個性があるのは当然なのですが、最近は説明会における”乏しい抑揚"が気になって仕方ありません。

何も意識しない院内の場面では、「スラスラ&ペラペラとした」MRの説明口調に皆が慣れてしまっているのです。
わざわざ医師がMRへ個別に指摘したりしません。
それを管理人が医師兼トレーナーの立場でじっくり眺めると、深刻な実情が見えてきます。

(1)抑揚が乏しい。
(2)表情に変化がない。
(3)何をもっともアピールしたいのかが伝わらない。
(4)そもそも自社の担当製品をどのように信頼しているのかが分からない。

管理人が担当している大手各社のMR研修は選抜研修が多いため、社内で上位層の働き盛りばかりです。
経験不足は言い訳にならず、どちらかといえば今後の自社を支えていく優秀人材のはず。
それにも関わらず、社内研修で上記の4つをすべて満たしてしまうMRが少なからずいるのです。

もしかしたらこの4つは優秀MRになるための必須事項ではないのかもしれません。
あくまでも社内研修中に目立つ欠点であって、本当の顧客を前にしている医療現場では驚くほど素敵な説明会を実践しているのかもしれない・・・。
この下手さ加減は、上司の視線が厳しいから、同僚の前で恥をかきたくないとプレッシャーがかかっているからだ・・・。
永遠にそう思っていたいくらい、内心では残念な例も目撃します。

上記の4つは、社外=部外者の立場から見ると、退屈で興味を抱けない説明会の”十分条件"のように思えます。
「抑揚のない口調で、変化の乏しい表情で、公式スライドをどんどん送っていき、型通りのお願いクロージングをするMR」の説明会が、聴講者の記憶に長く残るものでしょうか?

管理人の医師経験では、年単位で記憶に残っている各社の説明会はヒト桁レベルです。
どのMRが話していて、どこの製薬企業の何の製品で、どこで盛り上がったかをつぶさに記憶するには平凡な説明会が多すぎる。
数十秒で切り替わるスライドを見つめ続ける労力をつぎ込まずに、MRを見ていれば大きくうなずける機会が少ないまま。
仕事に対して真摯で真面目なMRでも、説明会で努力が報われないのは、訓練過程に難がある営業体制を放置しているからかもしれません。

抑揚が乏しい話し口調がMRに出現した理由は、いくつか考えられます。
(1)院内で説明会を獲得できるチャンスが減っており、各医療機関で実践から得られる試行錯誤が乏しい
(2)医師・薬剤師がインターネット情報や動画を先に閲覧しているため、MRによる説明会への注目度が減少した
(3)質疑応答が盛り上がりようがないテーマをMRが選んでいるため、聴講者が素直に反応しにくくなった
(4)社内での練習時に指導するリーダー・営業所長が、部下への具体的な指導法を学んでいない
(5)本社側が、自社MRが抑揚をつけて説明しているかにそもそも興味がない

ほとんどのMRの話し口調よりも、インターネット動画のキャスターたちのほうが上手なアナウンス技術を持っています。
視聴者が嫌がらない範囲で適度な抑揚もついており、何となく淡々とカメラに向かって話しているわけではない。
各キャスターたちの生き残りをかけた日々の練習、リハーサル・本番収録を経ている高度な動画に対して、MRの話し口調が置き去りにされている感があります。

リアルなMRと製品動画を「同列に比較するのは無意味だ」という反論も出てきそうですが、MCM(マルチ・チャネル・マーケティング)に押し込まれた医療従事者にとって、現在では同列に扱うべきものです。

WEB講演会やらメールマガジン、医療専門サイトを通じて製薬企業のアプローチは多数かつ熾烈を極めている。
「そちらはプロ、MRはアマチュアですから」とあっさり諦めるのではなく、MRならではのライブ感を活かす秘策を考え出して欲しいものです。
アナウンサー水準の製品動画コンテンツに対抗できない口調のMRを、院内でわざわざ説明させる理由が失われる前に。





社内研修に関わる医師として1000人以上のMRを見てきた管理人は、皆さんが資質の高い職種であることは良く理解しています。
でも製薬業界の先入観や社風に流されやすく、社内で比較すれば営業成績が出ていたというような曖昧さよって、MR個人の行動が”発展途上"になっているように見えてなりません。

もっと多面的な活動が出来る人たちなのに、ノルマの数字を最優先にして他を実際には重要視できない。
皆で金太郎飴型に無駄をそぎ落としたら、話し方にさえ多くの個性が発揮されなくなっていた・・・。
ただでさえ世間でも特殊な顧客群を対象としている営業職なので、淡々と話すことが将来のメリットを生むとは思えないのですが。

MRにとって現状を少し変えるために、”抑揚”が最初に個人で改善できる要素だと管理人は思うのです。

新聞でもネットニュースでも文章は何でも良いので、ひたすら単調に読み上げてから、つぎに強調部分を決めて大きな抑揚をつけて読む練習をしましょう。
文章には必ず強調しているポイントがあるもので、その単語や言い回しに各自が注目すれば、意図的に抑揚をつけて読むのはごく簡単です。
まずは200字程度で練習し、1分間・3分間の長さで色々と自主練習してみる。
スマホで録音して両方を比較してみれば、とくにお金もかかりません。
実際に聞いてその差を耳で確認しないと、製品説明でさえも抑揚に乏しいまま話している己の事実に、意外と気がつかないでしょう。
先日も某社で実例を見たのですが、上手に話しているつもりのMRが抑揚に欠けている事実を指摘されて、かなり驚いていました。

今夏に俳優(中島大介氏)とコラボした表現力向上のMR研修でも、文章やナレーションを読む上で、抑揚は非常に大切な要素だと痛感しました。
観客に対して台詞とその意味が伝わらないような舞台役者が、さまざまな観客を同じように感動させることはできない。
次はどのような展開になるのか、どきどきしながら実際に観るのが演劇の醍醐味です。
役者がつける台詞の抑揚はそれを指し示し、時間があいても次の展開を観客にいろいろと想像させる効果もあります。

抑揚に乏しい口調のMRは、聴講者に次の展開を想像させることができず、居眠りや無関心を誘いやすくなる。
この事実を軽視していると、上層部がMR維持の費用対効果を勘案して、数年後には動画コンテンツに役割を置き換える顛末になりかねない。
主力品の成績低迷で「転身支援制度」へと取り込まれる前に、MRには現場でもっとできることがあるはず。
具体的な活動目標を持ち直すことで、成果の根拠を増やすべきでしょう。

ちなみに管理人は各種の講演にあたって、「居眠りゼロ」を毎回の個人目標にしています。
数十人でも数百人規模でも、聴講者を居眠りさせない講演を目指しています。
もちろん力及ばずに数人は眠り込んでしまうこともありますが、その場合は寝た人を起こすための工夫をします。
その一つが、抑揚の使い方です。
なぜ抑揚が眠っている人たちを目覚めさせるのか?

わざと大声を張り上げなくとも、抑揚には場の雰囲気を一変させる効果があるので、その変化が居眠りしている人にも影響するのです
周囲の無関心は伝染します。
もちろん内容こそが重要ですが、それをどのような肉声で伝えるか、会場に見合った抑揚の程度はどれほどか、いつも懸命に工夫しなければいけない。
人前で話すことの面白さを理解するためには、皆が注目してくれる状況を自らで作り出す能力が求められます。

MRにはできるはず。
陰で愚痴る時間と同じくらいは、抑揚を意識して話すための練習時間を持ちましょう。

日々の仕事は大変で辛いものですが、顧客の記憶に残るやりがいは、何事にも代えがたい達成感があるのです。
ふらふらになりながらも、それを繰り返すことで誰にも盗まれない確かな成長を得る。
院内で週1回でもその嬉しい経験を得るためには、考えながら練習することが欠かせません。

急にはできないことを無理に繰り返すよりも、地道にできることを繰り返して上達するのは良いことですよね。

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