2014年12月27日土曜日

【製薬の講演会はどうなる?】2014年12月24日

先日、『ミライノカイギ展』という製薬業界向けイベントで、基調講演&パネリストを担当してきました。
製薬企業は数多くの講演会を全国で開催していますが、(医師である)管理人としては前々から異論反論を抱いていたので、それらを各社営業・マーケティング担当者へ意見したのです。

とはいえ、『医師の満足度の高い講演会とは?』というお題に対して、ひとりの医師があれこれ意見するのは容易ではありませんでした。

これまで各社MRから開催案内を受け取った多数の講演会のうち、実際に管理人が聴講したのはごく一部に過ぎません。
未聴講の講演会については講師陣や主催企業から内容を推定するしかありませんし、他の都道府県での事情になればさっぱり分からないわけです。

隣の市や県では、感動して泣き崩れるような"素晴らしい講演会"が毎回開催されているのかもしれない・・・。
各社の事情で営業エリアごとに区分けされた医師たちは、近隣で実施されている”大当たり”の講演会を知らないだけかも・・・。

こういった偏った発想を抱えていては、公平な論調を維持できませんが、実はほとんどの医師にとって講演会企画は生い立ちからしてナゾのままなのです。

世話人会に入るような上級医師は講演会の内情に精通していても、企業のマーケティング的な都合だけで参加を誘われる一般医師にとっては、どうして開催されているのか目的すら分からない。
販促における重要顧客ではないという理由で、MRから誘われない場合もあることは、医師にとっても知らされていない事実です。

ということで、”聴講者の医師にとっては、謎多き社内企画"という切り口で講演会について捉え直し、基調講演を行いました。
(2014年12月11日付の日刊薬業「試行錯誤続く企業の講演会 KOL頼みでは医師のニーズに応えられず?」に、この取材記事が掲載されています)

とくに管理人が疑問を呈しているのは、下記の点です。

(1)多忙な医師のオンタイムでもある平日夜・土曜日に開催が集中するのはなぜか?
(2)なぜ平日の日中に院内で開催できないのか?
(3)医師の処方動機につながりにくいと分かっていながら、なぜ講演会を企画するのか?
(4)講演会よりも事前の世話人会のほうが面白いのはなぜか?
(5)当たり外れについて、医師が参加しないと分からないままで今後も良いのか?
(6)KOLなる人々は誰がどのように決めた存在なのか?

パネルディスカッションでも取り上げられたのですが、講演会企画が社内向け&予算獲得用の起点イベントになってしまい、結局は(無難に?)同じ有名医師を各社が招聘し続ける顛末になってしまう
年間の講演料が合計1000万円を超える人気医師が複数生まれているように、医師の副業としても壇上の講師・座長業が立派に成立してしまうわけです。

管理人もMR研修・講演を副業的に続けているので、プロとしての能力に対してきちんと報酬が得られるのは良いことだと理解しますが、競合各社で同じ講演を繰り返している医師たちはどうなのでしょうか・・・。





上記の(1)から(6)の共通原因は、お仕着せ型の講演会がいつになっても改善されず、しかもそれだけの開催費用を製薬業界がまだ支払えてしまうからなのです。

莫大な金額を投入できる余裕が、すべてにおいて最善を尽くしたとはいえないような講演会を実際に開催させてしまい、聴講者の落胆を生む結果になる。
KOLはそのための便利ツールであって、本当に医学の発展に貢献すべく彼らを支援しているとはいえないのではないでしょうか?
1000人規模の全国講演会から数十人規模の地域講演会まで、内容の質がばらつく企画を続々と生み出すまま。
企画に関わるチャンスが多ければ、MRやマネージャーたちの社内業績作りにも役立つ・・・。

さらに講演会のもっとも重大な欠点は、「患者のとなりにいる医師だからこそ参加できない」重い事実にあります。

診療や検査、手術中の多忙な医師は当然、ホテルの宴会場までタクシーで出かけていく余裕などなく、患者のために懸命に仕事をしている。
“患者さんのために"を共通目標としている製薬業界が、講演会においては患者のとなりで奮闘する医師を結局は無視している構図になります。
スマホで院内の医師へ生中継などしないわけですし、会場にいなければ情報交換も食事もできない。

事実、管理人が市中病院・大学病院に勤務中、講演会に不参加だった最大の理由は「その日の仕事が終わっていないから」でした。
夜7時前、病棟内で空腹を我慢しながらカルテを記載していて「今頃はホテルで講演会が始まって、その後に美味しい食事があるんだよなあ」と何度も嘆いたものでした。

業務の優先度として、医師は”診療 >> 講演会参加"ですから、若手医師で日常業務を部下に依頼できない立場では、院内で働きながらただ参加をあきらめるしかないのです
いつも研修医を講演会へ連れ出してくれる上司は、それだけ日中の業務管理に長けているか、昔気質の医師だと言えるでしょう。

ちなみにWeb講演会はやはり夜7時開始が多いのですが、これも医師の現実を良く理解できていない証拠です。
開業医であっても経営業務や医師会関連を抱えているわけで、いつでも夜に余裕を持っているわけではない。
なにより医師も人間であって、公私に色々な難しいテーマを持って働いているのです。

「ワーク・ライフ・バランスの実現が非常に怪しい」医師という特殊な顧客を相手にしているのに、製薬業界はいつも社内都合を押しつけているのではないでしょうか?

なお、同イベントではこれらの解決策についてもいくつか具体案を提言しました。

これまでの投稿や連載でもアイデアを列記していますが、「リアルな空間に人々が集う意義」「忘れられないライブ感」をどのように再定義するかが重要です。
中でも、医師が講演する機会を増やすためには分科会や若手医師のショート・プレゼンテーション、さらには教授が部下と一緒に行うカンファレンス方式など、これまでとは少し異なる発想が必要だと考えています。

イベント会場には見事なプロジェクションマッピングが投影されていたのですが、技術的な演出すら「相手に覚えさせる」意味では決して間違いではないと感じました(もちろん、過剰演出ではいけませんが)。

講演会は黙って聴講しているだけではなく、壇上でスポットライトを浴びながら過ごすほうが、多くの知的経験を積むことができる。
事前のリハーサルや世話人会、MRとの討議、会場の雰囲気なども「忘れられない」職業経験に繋がります。

延々とお仕着せの講演会を企画するよりも、その医師が何年たっても懐かしく思い出すような企画をひとつでも多く立ち上げるべきでしょう。
管理人も若手時代に200人規模の講演会で症例報告をした記憶が、やはり忘れがたい経験のひとつです。

新年にむけて、これまでの講演会の課題を洗い出し、投入したコストをどれだけ最大限に取り返せるかをもっと考えてみたほうが良いと思います。
世間から「医療における壮大な無駄!」と糾弾されてから、慌てて改革するのでは遅いのですね。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。