2015年6月27日土曜日

【学会シーズンの宿泊手配】15-06-22

管理人がまだ若手医師だった頃、某学会の全国学術集会が遠方の都市で開催されたことがありました。
当時は常勤医として(バイトを含めて)収入が安定し始めた頃でしたが、学会参加には何かと出費がつきものです。
生活費が足りなくなりそうだったので、新幹線代金・宿泊費を何とかリーズナブルに済ませようとひとりで思案していました。
ポスターを含む発表者には医療機関から一定経費が支払われる場合もありますが、やはり臨時の出費は何かと大変です。
さらにその地方都市では、学会期間中に宿泊するホテルを予約するのも一苦労でした。
交通の便が良いホテルは大手旅行代理店が高い料金で確保していたり、すでに学会の主要会場にもなっています。
演題登録を済ませたばかりの数ヶ月前であっても、少し離れた駅前でなければホテルの部屋が取りにくく、金・土曜日はなおさら混雑している。
すると「**学会のとき、どこに泊まろうか悩んでいるんです」という管理人のつぶやきに、当時の上司が一言。
「宮本、くすりやさんに頼めばいいじゃないか」
常識そのものだろう、という呆れた表情で上司はさらりと答えました。
医師の場合、「くすりやさん」は製薬企業、あるいは担当MRのことを意味しています。
いわく、予約が取りにくい学会会場近くの人気ホテルであっても、製薬企業であれば得意先の医師用にあらかじめ部屋を仮予約している。
いつも製品を処方している身なのだから(こちらが儲けさせているのだから)、困ったときは担当MRに頼めば良い、というのが上司の意見でした。
なるほど、そうなんですかと頷く管理人。
MRって本当に便利な人たちだなあと、あまり大きな疑問を抱かずに聞いていました。
アゴアシ付き、つまり食事と交通までを無料提供される”MR同伴"がある、というのもその頃に知りました。
上級医になれば、うやうやしく"カバン持ち的なMR"が日程中に付き添いをし、個人秘書のようにあれこれ手配してくれる。
やっぱりMRっていうのは医師にとっての便利屋さんなんだ、と素直に納得してしまうほどでした。
時は流れて、"くすりやさん”が無料で労務提供&饗応してくれたのは巧妙な作戦だったか・・・と思わなくもありません。
処方数の多い医師をターゲットとした過剰な営業攻勢、時間外のおもてなし、高額ノベルティグッズの配付等々は、すべて製薬企業が利益を上げるための経費で実現していました。
その間、赤字転落で滅んだ製薬企業が見当たらないことを考えると、私たち医師は無頓着なまま、無料のおもてなし作戦におぼれて、くすりやさんの収益増加に貢献したわけです。
とくに春からの学会シーズンになると、それを口実にして各社MRの接近回数が増える。
提供するランチョンセミナーの案内、演題の予告、速報的なパンフレットの配布などで、MRはコール数を稼ぐチャンスが増えます。
営業ノルマに医師との面会・コール数が含まれている以上、どういうネタであってもとにかく接近したいと考えるのは、プロモーション担当者としてはやむを得ない面もあります。
ただ、手元の配付資料とスライドがなければ際立つディテーリングができないMRは、何のスキルを持っているのかと疑問を抱いてしまうのですが・・・。
過去に横行していたように、ホテルの部屋まで代行手配という一種の労務提供は、製薬企業の勝利で終わりました。



結局、目の前の”タダ提供"に負けるほど医師全体は無頓着(しかも傲慢)である、という悪しき実例を作ってしまったわけです。
投資されたコスト以上に製薬企業にリターンをもたらした過去をもつ私たち医師は、あれが何だったのかと個人的に思い出し、毎年忘れずに反省すべきです。
透明性ガイドラインにもとづく情報公開によって、全国の有力医師には現在も多額のコストが投入されていることが明らかになっています。
年間の講演料だけでも数百万円単位で、複数企業からを合わせると数千万円にも・・・。
本当に、こんなに高額でなければいけないのでしょうか?
「この先生とこの製薬企業は(正当な理由を含めても)お金でつながっている」と国民に公開できるようになっただけでも、かなりの前進ではあります。
今年の学会シーズンは、これらの関係性が今まで以上に世間の注目を浴び、会議場やホテル周辺にいるMRにも同様の視線が注がれると意識すべきでしょう。
なお、冒頭の宿泊手配について、管理人はMRへは依頼しませんでした。
たしかに部屋数を確保しているという情報はもらったのですが、どうやら部長など上級医向けの話だったからです。
まだ数年目の医師だった管理人は、医師の世界も待遇格差が大きいなあと実感したものです。
今となっては、おかしな甘え経験をしなくて済んだのですが・・・。
学会シーズンはMRの活動期、これも冷静に考えると不思議です。
多くの病気は暦通りではなく、医療用医薬品はいつでも必要とされているのですから。
熱いMR研修をこなしつつ、古い商慣習が残る学会シーズンへの疑問が大きくなるのでした。

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